1年生から導入し、4年生からは中学生向け辞典を用いて
辞書引きに取り組まれている事例
2012年5月取材
東京都江東区立東砂小学校
- ●学校概要
- 東京都江東区(人口約47.9万人)の小学校。
学級数は1~3年1学級、4~6年2学級。学級人数は、25~30人。 - ●お取り組み学年
- 2年生~6年生(国語辞典)
※2012年10月より1年生でも実施予定。 - ●お取り組みの開始時期
- 2009年~
- ●お話を伺った先生
- 佐藤 勝行 校長・鶴田 裕子 副校長
「自ら学ぶ姿勢を身につける」ことを目的に、達成感をもちながら取り組める活動として、2009年よりスタート。2011年度からは全学年で取り組んでいる。
4年生からは中学生向けの国語辞典・漢和辞典に持ち替えて、辞書引きを行っている。
佐藤 勝行 校長
「自ら学ぶ姿勢を身につける」ことを目的に、達成感をもちながら取り組める活動として、前校長高橋修先生のもと、辞書引き学習をスタートした。導入2年目までは指導要領に基づいて中学年を対象としたが、3年目より低学年にも対象を広げて導入授業を行い、結果として2011年度は全学年で取り組んだ。
校長先生のリーダーシップのもと、管理職の先生方が、担任の先生に取り組みの意図を伝え、主管、主任教諭を中心に各担任の先生が無理せずゆっくり学習活動として浸透させていったことで、学校全体の取り組みとして定着してきた。
佐藤校長は今年度より赴任。自らが保護者の立場で辞書引きの効果を実感していたこともあり、活動を継承することとした。
今年度の辞書引き活動への取り組み方針は、「継続と10%の挑戦」。今までの3年間の取り組みをいかに継続させ、新しい挑戦ができるかを学校ぐるみで考えていく。
■学校全体の取り組みとして経営計画に位置付ける
辞書引き学習は、学校全体の「学力向上」のための取り組みとして、「学校経営計画」「マナビフェスト」に位置付けている。
■導入は、1年生の10月
1年生はひらがなが定着する2学期の10月に導入する。
知っている(と思っている)ことばを引くところからスタートする。この結果として、ことばの正確な意味をとらえる活動は非常に大事だと考えている。
昨年度は10月から3月までで1,100枚ふせんをつけた1年生もいた。
導入後の実施は基本的に教師それぞれに任せている。家庭学習やいろんな活動のどこで取り上げるかを、それぞれが工夫している。
■小学生向けの国語辞典が物足りなくなったら、中学生向け辞典にチェンジ
小学辞典では物足りなくなる子どもも出てくるため、4年生からは中学生向けの『ベネッセ 新修国語辞典』『ベネッセ 新修漢和辞典』を使用。読めない字が出てくることはあるが、板書したり個別にフォローしたりして対応している。読めない字を文脈から類推する力が大事だと考えている。
5・6年生では、辞書を引くことで「ことばの多様な意味に触れる」ことができるよう、意識した指導を行っている。単純にふせんの数を競うだけでなく、語彙力の増強・漢字テスト・ことば作り(類義語・対義語)といったシーンで辞書を活用している。
■学校・家庭の垣根なく取り組むことが大事
年に3回ある学校公開では、保護者に辞書引き学習の様子を見てもらい、理解を深めている。辞書引き学習のような学習法は、学校だけで完結するものではなく、学校でも家庭でも、とにかく辞書を身近に置いて取り組むことが大事。学校での活動を家庭に波及させる際には、親が関心をもち、子どもを認め、ほめることがポイントとなる。
「マナビフェスト」の中でも、「毎日、子どもが活字に触れる機会をつくる。わからないことばがあった場合は、自ら辞書を引き意味調べをする 」よう、保護者に対して協力を求めている。
■取り組みのポイントとして重視していること
息長く、学校全体の取り組みとして継続させるためには、管理職による教員への適切な働きかけや、校務分掌組織に「マナビフェスト進行管理」を位置づけ、主任教諭が計画的に推進していくことが必要。また、新任の教員には活動の意図と楽しさをしっかり伝えていくことが、子どもたちの生き生きとした活動につながると考えている。
- 子どもたちが辞書を引くことに抵抗感がなくなった。ちょっとした時間にパッと辞書を引くようになった。社会や算数でも、新しいことばが出てくると、後ろから辞書を「パッ」と持ってきて「スッ」と引いている。ふせんが最初の100枚を超えると一気にステージが変わって辞書引きが定着するようだ。
- 5・6年生では、辞書を引くことだけでなく、「調べる」ことをいとわなくなる。身に沁み込んでいるといえるだろう。
- 新1年生、新任の先生にどう取り組みを伝え、継続・充実させていくかが課題。計画的、意図的な取り組みをしたいと考えている。
- 校長先生を中心とした教職員のチームワークで担任の先生をサポートしながら、毎日の活動の中にいかに無理なく活動を生かしていくかを検討して進めていきたい。