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学校全体でのお取り組み事例

2011年度より言語力・語彙力をつけるために辞書引き学習を開始。
国語以外の教科でも辞典を活用した授業を工夫し、
学力アップに効果を出されている事例

2012年11月取材

東京都足立区立本木小学校

●学校概要
東京都足立区(人口約67万人)の小学校。
各学年2~3学級で、学校全体の人数は452人。
●お取り組み学年
3~5年生(国語辞典・漢字辞典)
●お取り組みの開始時期
2011年~
●お話を伺った先生
佐原 愛子 先生(主任教諭)

お取り組みの概要

学力調査の結果より「ことばの学習」領域に課題があることがわかり、2011年より「辞書引き学習」を導入。国語辞典・漢字辞典ともに手元に置き、国語以外の教科においても積極的に活用する取り組みを行っている。
1年間の取り組みの後、学力調査の同領域の評価ポイントが著しくアップ。辞書引きの効果を実感されている。


平山 仁美 校長

佐原 愛子 先生

お取り組みのきっかけや問題意識

2011年4月に行った足立区の学力調査において、4年生の「ことばの学習」という領域の評価ポイントが区の目標を下回ったことがきっかけ。言語力・語彙力をつけるために、辞書に触れ、親しむことが有効ではないかと考えてスタートした。そもそも、 2008年に国際ブックフェアで実施された深谷圭助先生の辞書引きについてのセミナーに参加し、自分自身(=佐原先生)も興味を持っていたという背景があった。
3,4年生を対象として辞書引き学習を始めることとし、保護者会で辞書の購入を依頼。ふせんの購入については一括で依頼することは難しかったので行わなかったが、ある児童が自発的に持ってきてふせんをつけ始めたことで全児童に一気に広まっていった。

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辞書活用のお取り組みの具体例

■ふせんの数を競うのではなく、まずは、「引いて読むこと」を重視

辞書引き学習を始めるにあたって、まずは、 「引いて読むこと」を重視した。最初から、早く引く、たくさん引く、といったことを子どもに義務付けると負荷が高いと判断し、ぱっと開いて指さしたことばを読む、というところから始めた。その際、「先生に贈る言葉を探してね。」「お友達に贈ることばを探してね。」というような声掛けをすることで、動機づけを行った。
そんな中で「ね」や「あ」などの一文字にも意味がある、ということに気付いた子どもがいてみんなが喜び、競うように引き始めた。
単にふせんの数を増やす、ということを目的としていないが、やはり増えていくのは子どもにとっては嬉しいようだ。ふだんは学校に置いている辞書を夏休みには家庭に持ち帰るので、家庭でも取り組みは認知されている。家庭でも学習効果を実感し、ふせんの購入に協力くださっている。

■子どもの「引きたい」という意欲を引き出すことを重視

自ら辞書を「引きたい」という意欲を引き出すために、さまざまな声掛けをしている。「先生、この意味わからないー。」と言われたら、「じゃあどうする?」「困ったらどうする?」と問いかけて、子どもたちから「辞書引くー!」ということばを引き出す。
「先生が、答えを言おうか?」というと、必ず「待ってー」と言って自分で辞書を引きたがる。いかに、意欲を引き出すための声掛けをするか、が大切。

■ことばの力をつける辞書引き学習とは

ことばの力をつけるには、わからないときにいきなり辞書を引くのではなく、「予測させる」ことが大事だと考えている。考えて、自分の言葉で表現してみて、それが正しいかどうかを辞書で確かめる、という手順を踏むことで力がつく。必ずしも、「辞書を引く」という行為そのものを必須とはせず、たどりついた先にある意味をきちんと読んで理解することに重きを置いているので、とくに国語以外の教科の場合は、早く引けた子にページ数を言ってもらって時間を節約することも行う。そういう場合には、全員が同じ辞書を持っていることが望ましい。
ただし、早い子だけが相手になってしまわないよう、国語の時間においては、ゆっくり引かせる時間も確保している。

■国語以外の他教科でも辞書を利用

理科や社会においても、わからない言葉があったら辞書に向かう。理科室への移動にも辞書を持って行っている。
「知りたい」にかけてノートにタイ(魚)のイラストを書き、そこに見出し語と意味を書くようにしている。

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授業見学レポート(社会科)

■5年1組・社会(佐原愛子先生)

「テレビ会社は視聴者に情報を届けるために、どのような工夫や努力をしているのだろう」というテーマで調べ学習を行う。
資料に出てくるキーワード、「デジタル」「アナログ」「メディア」といったことばを引いていた。
ある児童が、『チャレンジ 小学国語辞典』掲載の「デジタルとアナログ」コラムを発見。皆の前で読み上げ、そこから「デジタル放送って?」「スカイツリーって何のためにあるの?」と展開していった。
調べるための道具として、先生支給のプリント・教科書と共に、国語辞典をしっかり使いこなしていた。

  • 国語辞典は、授業中机の上にずっと出したままで、随時手に取っている。最初は、きれいにグループごとの箱に並べて収めておいたが、取りに行くひと手間が面倒で、机上に置くようになったとのこと。漢字辞典は、いすの背中にかけた防災頭巾に入れている児童が多く、必要に応じて背後からさっと取り出して使用していた。
  • 使い込まれて手ずれした辞書が多いことが印象的。見出し語を見つけたらふせんをはっておしまい、という使い方ではなく、内容をきちんと読み込んでいる上級生ならでは、という辞書が多かった。
■3年2組・社会(西川真以先生)

印刷工場を見学した結果をまとめる授業。メインテーマは、印刷工場からの「流通」。
先生からの、「何に印刷できる?」という発問に対し、「発泡スチロール」という答えが出、「発泡スチロール」を辞書で引くと、語義内の「合成樹脂」「断熱材」も引いてみよう、となり、次々と自ら辞書に向かっていた。
メインテーマである「流通」については、先生から「流通ってどういう意味かな?予想してみよう。」という発話があり、子どもが予測して自分の言葉で語り、辞書で確かめるという流れをとった。

  • 西川先生のお話によると、自分の言葉で考えを表す活動を大事にされているとのこと。子どもたちは、一生懸命自分の中でことばを探し、3年生とは思えないレベルで考えを表現していた。

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辞書活用お取り組み後の成果

5年生の2012年4月の学力調査で、課題としていた「ことばの学習」の評価ポイントが劇的に上がった。その他、読解など国語に関してはすべての領域でポイントが上がっている。

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課題や今後の展望

  • まだ、全員が完璧に取り組めているわけではない。「楽しい!」という気持ちを持って全員が取り組めるように、また、それを校内にも校外にも広めていきたい。
  • 辞書で学んだことを、この後6年生・中学生になっても、また生活の中でも生かしていけるとよい。「引かされている」のではなく、「楽しい」「引きたい」「これを引けば何でもわかる」という気持ちで自ら取り組んでいく姿勢を大切にしたいと思う。


社会のノート。タイのイラストに辞書で調べたことばの意味が書いてある


いすの背の防災頭巾に入っている国語辞典と漢字辞典

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