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小規模校でのお取り組み事例

地域特性による子どもたちのコミュニケーション力に課題を感じ、辞書引きを導入。
研究主任の先生を中心に、全学年で辞書引きに取り組まれている小規模校の事例

2012年5月取材

千葉県八千代市立阿蘇小学校

●学校概要
千葉県八千代市(人口約18.9万人)の小学校。
各学年1学級で、学級人数は12~26人。
市内唯一の農村地帯にある小学校。
●お取り組み学年
1~6年生(国語辞典)
●お取り組みの開始時期
2010年11月~
●お話を伺った先生
大友 奈緒 先生(研究主任)

お取り組みの概要

2010年に「辞書引き」を導入し、今年で3年目。学校教育目標を具現化する手立ての中にも「辞書引き」を位置付け、学校全体での取り組みとして定着させている。朝の集会の時間を使った「全校辞書引き大会」や「辞書引き名人」の認定、月2回の「めざせ!辞書引き名人!」プリント配布など、学校独自の特色ある取り組みを行っている。


大友 奈緒 先生

お取り組みのきっかけや問題意識

■「言わなくても通じる」恵まれた環境ならではの問題

八千代市の北部にある自然が多く残る学区である。3世代同居の家庭が多い。地区ごとの子どもの数が少なくなってきている。遊ぶための公園も少なく、地域での子ども同士の交流が課題である。
生活の中で「言わなくても通じる」恵まれた環境にいることで、語彙力・コミュニケーション力に課題を持つことが懸念される。中学校に進学するなど、違う環境になった時にとまどうことのないよう、子どもたちには語彙力・コミュニケーション力をつけたいと常々思ってきた。学校としても、音読・作文や読書の取り組みを中心に、長年国語の研究を続けてきた。

■身につく「辞書引き」をさせたい

3年生を担当していた3年前、教科書どおり2時間、国語辞典の指導を行った。子どもたちは一通り辞書を引けるようにはなったものの、定着せずに終わったという印象で、身についているかという点では課題があると感じていた。
そんな折、ベネッセコーポレーションの担当者による「辞書引き」導入授業をきっかけに、全校での取り組みを開始。図書館を会場に、低・中・高学年の3つに分けて3コマの導入授業を行った。対象によって、レベルを少しずつ変えて実施したところ、非常に盛り上がった。高学年は引き方がわかっているため、最初からゲーム感覚で楽しみ、低学年は、「知っていることばを探す」という内容が新鮮で楽しかったようだ。
普段接している教師ではなく、外部の講師が教えに来てくれるという場の設定が効果的だった。いつもと違う先生、いつもと違う教室、という体験が、ハレの感覚となり、非常に良かったのではないかと感じている。

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辞書活用のお取り組みの具体例

■学校全体の取り組みとして実践

3年前に辞書引きを導入して以降、学校ぐるみの取り組みとして定着していたことから、今年度も「辞書引き」を継続している。
「学校教育目標」の具現化の手立ての中に、[基礎学力《知》]として、 2.言語活動の充実を図ります。
○読書や辞書を引く習慣をつけさせ、自分の考えを表現する活動を充実させます。
と掲げているほか、今年度の「研究の紀要」にも<日常的な耕し>として“全校辞書引き”を位置付けている。
管理職の後押し、全職員の理解があったこと、また、自身が「研究主任」という立場であったため、学校全体に普及・継続をさせやすかったといえる。

■「マイ辞書」の必然性を仕組む

本校では、国語辞典は1年生の10月に、漢字辞典は4年生で一括購入している。「マイ辞書」の必然性をきちんと仕組み、それを保護者にもしっかり伝えることが大事。その結果、保護者も非常に協力的である。
ふせんが増えすぎると扱いにくくなるので、1年間分のふせんを外して、思い出にしている学年もある。たとえば、低学年ではふせんを1枚の台紙に貼り替える、高学年ではふせんを袋に入れてリボンをつけるなど。
「学びたい」「辞書を引きたい」という欲求を子どもは皆持っている。それを引き出すのにふせんは非常によい手立てだと感じる。しかし、継続させるにはそれだけでは足りない。いろんな形で、子どもたちに刺激を与えていくことが大事。


図書室前の掲示板に貼り出された「めざせ!辞書引き名人!」のプリント


<辞書引き名人認定カード>

■オリジナルプリント「めざせ!辞書引き名人!」

独自の取り組みとしては、辞書引きのためのプリント「めざせ!辞書引き名人!」を月に2枚作成して全学年に配布している。終えたプリントを自分のところにもってくるとシールがもらえ、プリントは図書館の廊下に掲示されるという仕組み。「担任でない先生のところに行ってほめてもらう」というのが子どもたちにとってはハレの感覚で、大好きなシール(四字熟語シールなど面白くてかわいらしいもの多数)がもらえるという喜び、みんなが見る場所に掲示されるという晴れがましさなどが辞書引きを続ける動機づけになっているようだ。辞書引きは、隙間時間や朝のチャレンジタイム(15分の帯時間)に行っている。

■「全校辞書引き大会」の実施

また、つい先日の5/25には、金曜朝の「朝会・集会」の時間を使って、「全校辞書引き大会」を行った。基本は早引き競争で、最初は学年別に同じことばを引いて、一番早く引けた子とそれから1分間以内に引けた子を「辞書引き名人」に認定するとしたところ、6年生はほとんどが最初の子から1分以内に引けた。
最後は全校みんなで競争したが、少人数の学校なので、全校生徒がお互いの顔を知っているという環境もあり、非常に盛り上がった。今後、1学期に1度くらい開催したいと考えている。
辞書引きは、どの子でも取り組めるのがよいところ。「全校辞書引き大会」でも、辞書引きの練習成果が速さにつながり、子どもたちは、大会後の感想に喜びをつづっていた。
授業以外の時間でも、「どれだけ子どもたちを耕せるか」という視点を大切にしている。“楽しい”ことは続けられても、同じ方法ばかりだと子どもたちが飽きてしまうので、いろいろな手法を模索している。


「全校辞書引き大会」開催を知らせる掲示物


児童の「全校辞書引き大会」の感想

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辞書活用お取り組み後の成果

  • 今の3年生は1年生の時から「辞書引き」に取り組んでいる学年。3年生の授業で、教科書に基づいて国語辞典を扱った際、すでに引き方は身についているので、「見出し語」や「清音」「濁音」「半濁音」といった用語を確認し、楽しく学習できた。今までの3年生とは全く違い、辞書引きが身についていると感じた。
  • 他教科で難しいことばに出合ったときに自然と辞書に当たっている。社会科では、「特色」「航空写真」と言ったことばを確認していた。わからなかったら辞書を引けばよいということが、体でわかっている感じ。自分なりに課題を解決しようとし、その方法がわかる⇒他教科にも適用できることがわかる、という課題解決の方法がひとつ身についた。子どもたちが自然にそれを実践していて驚いた。
  • 3年で俳句を習ったとき、自然に「まつおばしょう」を引き、そこに出てきた「えどじだい」という言葉を引いていた。社会の授業で、受身で「江戸時代」を習うのと、自ら知りたくて「江戸時代」を習得するのでは学ぶ意味が違うと思う。辞書引きは、学ぶ意欲と学ぶ技能、言語の獲得につながっていると感じている。

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課題や今後の展望

  • 当初の目的であった語彙数の増加については、きちんとした検証はできていない。
  • ふせんの増加を単純に喜ぶのは、4年生ぐらいまでなので、高学年でどう深めるかは課題。辞書引きの、ゲームとしての楽しさに加え、「授業」として使えるものにしていきたい。習熟のために辞書を取り入れていきたいと思っている。
  • ただ、その前段として、3・4年生までに辞書引きが身についているよう、しっかり耕しておくことが大事。定着のための訓練は、高学年では遅い。高学年での活用は、場当たり的ではなく、辞書引きの必要感を持つように仕組むということが重要だと考えている。
  • 6年生の「論語を読む」という単元計画の中で漢和辞典を授業に取り入れ、漢詩に親しむための手立てとすることを計画している。

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