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小規模校でのお取り組み事例

中学年全員に、「貸し出しマイ辞書」を配付。
3年生からスタートし、複数学年で辞書引きに取り組まれている事例

2012年5月取材

宮城県加美町立宮崎小学校

●学校概要
宮城県加美町(人口約2.5万人)の小学校。
各学年1学級で、学級人数は、13~26人。
●お取り組み学年
3年生と4年生(国語辞典)
※2012年度より高学年でも実施。
●お取り組みの開始時期
2012年1月~
●お話を伺った先生
中川 美津子 教頭

お取り組みの概要

2011年度に、町の予算で辞書を購入し、3・4年生全員に貸与。「貸し出しマイ辞書」として卒業まで活用する予定。
辞書引き学習を、学校の経営方針の中に位置付けて学校ぐるみで取り組んでいる。


中川 美津子 教頭

お取り組みのきっかけや問題意識

■子どもたちの語彙力不足を痛感

元々、子どもたちの語彙力不足を課題として感じていた。語彙力不足とは、読解の際に意味がわからないということと、表現の際に使える語彙数が少ない、という双方。
読解力という点においては、全国学力調査の算数の文章題などで白紙回答が多いことが目立っていた。また、教師からの問いかけに対し、自分の考えを自分の言葉でうまく表現することを苦手としている児童もおり、課題を感じていた。
子どもたちの読解力を向上させるためには、読書量を増やすことと、語彙力を高めていくことの両方が必要と考え、辞書引きによって語彙が増えることを期待して開始した。

■「貸し出しマイ辞書」を全員配付

町から支給された、独自予算を使って辞書を2学年分(3・4年)購入して子どもに貸与。「貸し出しマイ辞書」として、子どもに1冊ずつ『チャレンジ 小学国語辞典』を持たせている。導入に際しては、ベネッセコーポレーションによる先生向け研修と3・4年生向けのひとコマ辞書引き授業を行って、辞書引き学習をスタートした。
ふせんについては、懇談会の保護者向け資料に「ふせんを買ってあげてください」と書いて依頼した。


学校からの「貸し出しマイ辞書」のため、番号シールがはってある


第1学期 学級懇談資料

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辞書活用のお取り組みの具体例


5年生4月の授業で使用した資料


横にしたケースに立てて収納


学校経営方針

■担任の裁量で、隙間時間などを有効活用

一斉に導入した後は、朝読書やスキルタイム、課題が終わった後などの隙間時間を有効利用しながら、各担任の裁量で学年に合わせた指導を行っている。

■高学年では、辞書引き学習を言語活動と結び付けて実践

たとえば、今年度の5年生の4月の参観授業では、パワーポイントの資料を使ってクイズ形式で興味を持たせながら、同音異義語や漢熟語への広がりが出るような授業を行った。言語活動と辞書引き学習を絡めた実践形式。
ことばへの興味が持てるよう各担任がそれぞれに工夫し、子どもたちに「ゆさぶり」をかけていくことが大事。

■辞書引き学習のよいところとは?
  • 子どもが興味を持って続けるには、遊びながらゲーム感覚でできるということがとても大事。そこに応えられる学習法である。
  • 一人ひとり「進度が違ってもよい」というところがよい。とはいえ、子ども同士、静かな熱い戦いを繰り広げている。ふせんの枚数において、決してズルをしないのが子どもの面白いところ。
  • 最初のハードルが非常に低い。ページをながめる⇒知っていることばを見つける⇒ふせんに書いて貼るという方法なら、どの子でも始められる。
  • ふせんに番号を書き、辞書に貼ることで確実に達成感を得られる。
  • 教師にとっていちばん嬉しい「子どもの喜ぶ姿」「保護者の喜ぶ顔」が見られる。
■学校としての取り組みのポイント

学校全体の課題と結びつけ、大きな方針に位置づけて学校ぐるみの取り組みとしたことが、複数学年での継続実施につながっている。
2012年度においては、学校経営方針である「今年度の重点目標Point5」の中で、<「読書する習慣づけ」をさせます>と掲げている。ここでは、学習の土台づくりを目指しており、辞書引き学習はここに位置づくものとして考えている。

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辞書活用お取り組み後の成果


整然と並べられたマイ辞書たち

  • 何でも「先生~」と聞く子どもに、ふだんから「自分の目を使いなさい」と言っている。「学習の内容」だけを教える教育から「学習するすべ」を教える教育に転換していく必要があり、辞書引きはその一助となっていると感じる。
  • ふだんより、靴を揃えることと同じように辞書を揃えて置くように声がけしており、子どもたちは教室の後ろの棚にきれいに並べて置いている。また、ふせんをまっすぐに丁寧に貼るよう指導しており、学習に向かう姿勢や生活指導に近いところでも効果を感じる。
  • 特にふせんの少ない子がいるわけではなく、子どもたちはみんな辞書引きに「はまった」という印象がある。研修を受けたことで教師自身が辞書引きに飛びつく⇒教師の楽しむ姿勢を子どもが敏感に察知して面白がる⇒結果として、学校全体で楽しく取り組む、という流れができた。

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トピック

■「いちばん救いたい子が救えた―不登校の児童が辞書引きで自信を得た」

不登校で、授業に参加するのが難しかったある児童が、辞書引きの導入授業において、1時間でいちばんたくさん辞書を引いてふせんを貼った。みんなの前で講師にそのことをほめられたことが大きな自信となり、その後も授業に参加できるようになった。
元々、読書も好きだし勉強もしたい児童だったが、遅刻・不登校が重なる⇒学習が虫食い状態になる⇒わからないから授業に参加できない、という悪いサイクルに陥っていた。
辞書引きというシーンで活躍し、みんなの前で認められたことが大きな自信となって学習に参加するきっかけとなった。その後3カ月で約400枚のふせんを貼った。引き続き、授業にもきちんと参加できている。

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課題や今後の展望

  • 辞書引きに限ったことではないが、決められた時間の中でものごとをやることに慣れていないところがあるので、辞書引きにおいても、スピードを意識した指導も必要だと感じている。
  • 新指導要領による授業時数増のため、子どもたちが学校にいる時間が長くなった。なんとか大きく乱れずにはやっているが、教師の負担は当然増えている。教務主任や教頭が授業に入って担任の時間を作る、また、校務のデジタル化によって効率化をはかるなどしながら、今後も辞書引きに取り組んでいきたい。

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