全校一丸となって辞書引き学習に取り組んでいる事例。
国語だけでなく他教科の授業でも積極的に国語辞典を利用している。
2013年2月取材
福島県福島市立中野小学校
- ●学校概要
- 福島市(人口29万人)の小学校。
3~6年は複式学級制で、全校児童数は33名。 - ●取り組み学年
- 1~6年(国語辞典)
- ●取り組みの開始時期
- 2010年度~
- ●お話を伺った先生
- 校長 須田 尊 先生
教頭 市川 潤一 先生
渡邉 朋子 先生
鈴木 文恵 先生
全校児童33名が一丸となって辞書引き学習に取り組んでいる。年度ごとにふせんの数を競うコンクールを実施。
国語の授業のほか、理科や社会でも手元に置いて使用している。
渡邉 朋子 先生
鈴木 文恵 先生
深谷圭助先生の実践について興味を持ったことがきっかけ。また、同校担当のベネッセコーポレーションICTサポータより「辞書引き学習」の導入授業についての提案があり、取り組むことにした。
「辞書を引く」という単元があるからやる、というのではなく辞書を引くことを日常化させ、自分で調べる姿勢を身につけさせたいという思いがあった。全校33名と小規模校ならではのよさを生かして、「みんなでやろう!」と全校一丸となって取り組んでいる。
取り組みは2010年度後半から始まり、2011年度より本格的に取り組んだ。
調べたことばには、全体にマーカーをひいている
■ベネッセコーポレーションのICTサポータによる導入授業でスタート
入学説明会において、一年生から国語辞典を準備いただけるよう保護者に依頼して全員MY辞書を準備。
3,4年⇒5,6年⇒1,2年の順にベネッセコーポレーションのICTサポータによって導入授業を行ってスタートした。
■年度末のコンクールに向けて1年間のふせんの数を競う
どれくらいの数のことばを引いたかが、ぱっと見てわかるよう、色の異なるふせんを4種類用意した。1~100語、101~200語、201~300語、301~400語と色を変えることで、達成感を味わいながら次々辞書引きを進めていった。
しかし、1年間で500語以上引いた児童がいて、色の種類が足りなくなってしまい、これは嬉しい想定外の事態だった。
ふせんは、1年が終わったときに外すが、引いたことばにはマーカーをひいているので、後から見返すことができる。
3年は緑、4年は黄色など、学年ごとに色の違うマーカーを使うことで、自身の引いたことばの変遷をたどれるようにしている。
■3,4年(複式学級)・国語
3年生 単元:「人をつつむ形-世界の家めぐり」
読解の中で、「石がき」「台風」「気候」などの語を辞書で引き、皆で声を合わせて読む。その後辞書にふせんを貼る。
「台風」の類語として掲載のあった「サイクロン」「ハリケーン」を引いて意味を確かめ、ことばを広げていた。
4年生 単元:「ゆめのロボット」を作る
本時は、自分で考えたロボットを発表する授業。津波を防ぐロボット等、ユニークなものを次々発表していた。3年生も「聞く」授業として参加。
- 国語辞典は、授業中机の上にずっと出したままで、随時手に取っている。ごく自然に辞書に向かう姿勢が定着していることを感じた。
- ロケットの発表の中で「ロケット・ランチャー」という言葉が出てきたが、小学生向けの国語辞典には見出し語がのっておらず、先生が、大人向けの辞書でフォローされる場面も見られた。
漢字辞典も手に取れるよう準備されている
板書された語の上にネームプレートを動かしていく
■1年(単式学級)・国語
1年 「花いっぱいになあれ」
教科書音読の後、先生が板書したことばを各自辞書で引いていく。一語引けるごとに前に出て、自分が引いている語のところにネームプレートを動かしていく。
- 1語ごとに前に出てネームプレートを動かすことで、ゴールまでの距離がひと目でわかるため、友達との競い合いを楽しみながら集中して辞書に向かうことができていた。
- 「心がゆれる」という表現について、先生から「どういう意味だと思う?」と問いかけたところ、「走ってドキドキするってこと?」との答えが出た。みんなで確かめようとしたところ、「心がゆれる」は小学生向けの辞書にのっていなかった。ここで、先生が「ゆれる」を引いてみようと指導し、意味の「②気持ちが定まらない。はっきり決まらない。」のところに、用例として「行こうかやめようか心が揺れる」があることを皆で発見。用例でもことばが探せるという新たな気づきを得ていた。
手提げに入れて机の横に下げ、いつでも手に取れるようになっている
- 子どもたちは皆、辞書引きが大好き。ふせんが増えることを楽しんでいるのはもちろん、知らないことばを知って語彙を広げるという本質的な楽しみも味わっている。引いたことばのページを読み進めて楽しんでいる姿を見て、改めて総ふりがなつきの辞書のよさを実感している。
- 「さあ、辞書引き学習をやるよー」と改まった形でなく、隙間時間を利用していつの間にか自分たちで辞書に向かっている。元々、辞書の引き方を学ぶ単元があるからやる、ではなく、「日常化」させることを目的としていたため、大きな成果と捉えている。
- 子どもたちは、せっかく辞書を引いても、のっていないことばが多いとやる気をなくしてしまう。適切な辞書を持つようすすめること、また、小学生向けの辞書でのっていないときに、大人向けの辞書や事典、図鑑などにいざなうことも大事だと考えている。
- 現在は、年度単位で区切って枚数を競うため、1年間でふせんをいったん外している。が、子どもによってはせっかく貼ったふせんを外すのを嫌がる場合もあり、また、教師としても6年間の蓄積でカリフラワーのようになった辞書を見てみたい気もしている。子どもたちのモチベーションを保ち続けながら進めるにはどちらのやり方がよいか検討したい。