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学年単位でのお取り組み事例

毎月開催される「辞書引き大会」出場を目指して、児童が自分の辞書を使いこみ、
まさに唯一無二の「マイ辞典」となっている事例

2013年10月取材

千葉県 八千代市立 八千代台小学校

●学校概要
千葉県八千代市(人口約19.3万人)の小学校。
全校児童数は436名で、学級数は17学級。
国語の研究校でもあるので、読書などにも力を入れている。
弊社の学校応援企画「クラスみんなで辞書引き学習にチャレンジ!」参加校。
●お取り組み学年
3年生
●お取り組みの開始時期
2013年度~
●お話を伺った先生
小林 雅典 先生 大木 尚美 先生(3年生担任)

お取り組みのきっかけや問題意識

ベネッセの担当者による3年生への辞書引き授業がきっかけで取り組みを始めた。昨年も3年生で実施しており、他の先生から良かったと聞いていた。


小林 雅典 先生  大木 尚美 先生

お取り組みの概要

5月下旬から取り組みを始め、子供たちは国語の時間にはいつも机の上に国語辞典を出し、授業の中でわからない語句を引いたり、漢字ドリルなどと一緒に辞書引きを進めたりしている。さらに、先生の方では子供の意欲を持続させるため、定期的に「辞書引き大会」を開催しており、子供たちはそれを目標にどんどん辞書を使うようになった。今では「自分の辞書でないと引きにくい」というまでに使いこんでおり、辞書そのものが好きになっている。

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辞書活用のお取り組みの具体例


本選に進んだ選抜メンバーはいすに座り、その他の児童は床に座っている。

■フェスティバルとしての「辞書引き大会」

辞書引きは、子供たちに任せているだけだと新しい単元の意味調べの道具でしかなくなり、だんだん使われないものになってしまう。辞書は、ちょっとした時の読み物にすることが大切である。小学校3年生の場合、お祭り的な、何か目標になるものがあると、意欲が全く変わってくるため、国語と総合の時間を使って、定期的に「辞書引き大会」を実施している。
なお、「辞書引き大会」の本大会は月1回だが、ひと月空いてしまうと子供たちのエネルギーが切れてしまうため、本大会の間に中間大会も設けている。


「高速の部」「調べ書きの部」「ふせんの枚数の部」のそれぞれで表彰される。

■「辞書引き大会」ではいろんな努力が評価されるように

6月に初めて「辞書引き大会」を実施してから、何度も回を重ねてきたが、試行錯誤しながら改善している。現在は、辞書を引くスピードを競う「高速の部」、いかに早く正確に言葉の意味を書き写せるかを競う「調べ書きの部」、「ふせんの枚数の部」の3部門に分け、上位入賞者を表彰している。最初は辞書を引く早さのみを競わせたが、それだと早さでは絶対に勝てない子が出てくる。そうすると今度は、早さだけでなく、正確に意味を理解し、書き写す「調べ書きの部」を入れようということになって今の形になった。「調べ書きの部」では、こちらの狙い通り、子供たちも丁寧に書くことを意識している。

■厳しい予選を経ての本選出場は狭き門

辞書引き大会は3年2クラス合同で行っている。本選前日に各クラスで予選を行い、「高速の部」「調べ書きの部」ごとに上位7名を選んで、当日は選抜メンバー14名で競い合う。予選に落ちた大多数の児童も同じ問題に取り組んで大会に参加するが、入賞することはできない。
本選出場は大きなモチベーションになっており、子供たちも必死である。メンバーが接戦で決まらず、予選を7回実施したこともあった。予選に漏れた子は悔しさで震えていることもある。

■「下剋上ルール」で、さらに意欲的な参加を仕掛ける

辞書引き大会はもともと「選手(選抜メンバー)」と「応援団(予選に漏れた児童)」に分けるつもりだったが、子供たちの方から「僕もやりたい」「本当は自分も出られたはずのに…」などの声が上がり、現在の全員参加の形になった。
今では児童の辞書を引く早さが非常に競ってきたので、子供たちの想いをつなぎとめるためにも、次回から、選抜メンバーの3位のタイムまでに滑り込めた人は表彰する「下剋上ルール」を設定することにした。このルールがあれば、予選を通らなかった子や予選に欠席した子も意欲を持って大会に参加できる。


ふせんの枚数が1000枚、3000枚と達成するごとに、先生の手作りラベルが贈られる。

■もはや「ベネッセの辞書」ではなく「自分の辞書」に

子供たちは毎日辞書を持ち帰っている。家にもう一冊辞書を持っている子もいるが、そちらは使わない。毎日使っている、ふせんがいっぱい貼ってある辞書の方が使いやすいという。
予選会の時に自分の辞書を家に忘れてきた子がいて、担任の辞書を貸したが、ひたすら「この辞書、全然使っていないからページがくっつきすぎて使いづらい。ダメだ」「先生の辞書じゃ勝てない。空気の入り方が違う」と言っていた。内容は同じであるはずだが、それはもう「ベネッセの辞書」ではなく、「自分の辞書」になっている。

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辞書活用お取り組み後の成果

  • 最初は「辞書引き大会」に出ることが目的で辞書を引いていたが、子供たちは使っているうちに、辞書そのもの、言葉そのものが好きになっていると感じる。これだけ使いこむと辞書を引くことが習慣化されてきて、他教科の時間でも辞書を使いたがるようになってきた。
  • 作文など、子供たちの文章を見ていると、非常に表現の幅が広がってきたと感じる。「たとえばこういうことなんだけど…」と何かを説明した時、子供たちが辞書を引いて、「こういう言葉でも表現できるよね」とか「それはこういう意味だよ」「それだったらこういうふうに使ってもいい」とか、ひとつ石をぽんと投げた時に子供たちの間で波紋が広がるようになってきた。
  • 辞書はとても地味なもの。たいして使わずに6年間終わってしまう子、図書館で借りてきて少ししか使わない子も多いが、本気で使わせるとこんなふうに子供たちが変わってくることが分かった。この子たちは辞書を引くことが身についているので、これから何か分からないことがあれば、自分で調べるようになると思う。

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見つかった課題や今後の展望

  • 問題を出すと、子供たちから「その言葉はもう調べた」などと言われるので、出題がだんだん大変になってきた。今度は「5分間でどれだけ引けるか」というように、決められた時間の中で数を競うやり方も取り入れたいと考えている。
  • 今後は漢字辞典の辞書引きにも挑戦したいと思っている。


「調べ書きの部」のプリント

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第3回辞書引き大会見学レポート(辞典編集部より)

■全員参加の、大変な熱気に包まれた大会

選抜メンバーはもちろん、その他の子供たちも全員が真剣勝負で挑む、熱気にあふれた大会でした。
教室の前に、机といすが並べられ、選抜メンバーはここに着席。その他の子供たちは床に直接座って辞書を引きます。
出題数はそれぞれ6語ずつ。この日は「高速の部」で、「一網打尽」「レーンコート」「第一人者」「所在ない」「苦虫をかみつぶしたよう」「ぬれねずみ」、「調べ書きの部」で、「口が悪い」「ひとすじなわではいかない」「のっぴきならない」「耳を傾ける」「手綱を引き締める」「石の上にも三年」という言葉が出題されていました。
選抜メンバーはお題の言葉を引き終わると辞書をもって小林先生、大木先生に確認してもらいます。「調べ書きの部」では、正しく書き写せていなかったり、文字がまちがっているとOKがもらえません。
先生によると、出題に際しては、子供たちが持っている全ての辞書にあたって「どの辞書にものっている語かどうか」「子供たちにとってどれだけ歯ごたえのある言葉か」に留意しながら言葉を選定されているそうです。
表彰される可能性があるのは選抜メンバーだけにもかかわらず、その他の子供たちも真剣に床で辞書を引いている姿が大変印象的でした。


この日の「高速の部」の出題


「調べ書きの部」の結果を先生にチェックしてもらう児童


児童の皆さんからいただいた文集

■文集にあふれる「辞書引き」への想い

授業を見学させていただいたときに、「辞書引き」に取り組んだ児童の感想を書きつづった文集をいただきました。以下、いくつか抜粋してご紹介します。(表記は原文ママ)

  • わたしは、自分の辞書をたから物のように思っています。自分の辞書じゃないと、なんだか辞書をしらべるのがおそくなっていくかんじがしました。だから自分の辞書をたいせつに思っています。
  • わたしは辞書をはじめてやった時、「辞書って、とても楽しく意味が調べられる。すごい。」と思いました。意味のべんきょうも楽しくできるし、意味は絵でせつ明してあったりして、辞書ってすごいなと思います。
  • ふせんが多くなって、自分のじ書じゃなきゃ、ひけなくなりました。(中略)多くなると、ページがわかります。じ書は宝物になりました。いつ、ボロボロになっても、宝物はきえないからです。
  • ぼくははじめ、辞書引きがぜんぜんできませんでした。でも、ずっとやっていたら、できるようになりました。それに引いていると、意味がわかったり、ふせんがふえたりするのが楽しくて、ぼくのじしょはたから物です。
  • 調べる前、ぼくはぜんぜん言葉の意味をしらずに使っていました。そしたら意味をわかっていくうちにじ書引きが楽しくなってきてうれしいです。ぼくは家に帰ったら、すぐじ書引きの事をおもい出してすぐやっています。
  • さいしょの時は、「カリフラワーになんてなるわけないよ。」と思いましたが、今では(辞書にふせんがたくさんついて)バラがさいたようになっています。(中略)さらに楽しむために、今は友だちと問題を出しあいます。そうするとさらに楽しいです。

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